リードオルガンという楽器について皆さんはどれほどご存知でしょうか。
足踏みオルガンという名前で記憶していらっしゃる方も多いと思います。
かつては教室や音楽室にあったものです。安っぽい音を出し、勉強机の代わりにもなりました。また、高価なピアノは買えないから、とりあえずオルガンで代用しようと考えたこともありました。
しかし、これらは教育現場のために安価で大量に作られた物であって、本来のリードオルガンの姿からはかけ離れた物でした。
リードオルガンは別名ハーモニュームとも呼ばれ、19世紀の中ごろにフランスで発明された楽器ですが、その発音体は中国起源のSengに使われていたフリーリードです。日本では笙という名前で雅楽に用いられる楽器すが、この東洋の音源をヨーロッパの鍵盤楽器に取り入れて作られたのがリードオルガンです。
ロマンティックなフリーリードの響きが人気を呼び、その後各地で製作されましたが、現在ではほとんど作られていません。国内での生産もすでに終了しています。短い時代を一気に駆け抜けた様なイメージを持つ楽器です。また、現代の様に交通が便利でなかった時代に、すでに遠く離れた地域の文物が融合していた事は壮大なスケールさえ感じられます。
明治時代に東京芸大の前身の音楽取調係が設置され、唱歌に代表される洋楽の導入や、賛美歌に代表されるキリスト教の布教活動と大きな関わりを持つ楽器です。唱歌と賛美歌、さらに仏教賛歌とも深い繋がりがあるのですがまた機会を改めたいと思います。
いずれにしても、リードオルガンは独立した楽器であり、パイプオルガンにはない無段階のエクスプレッションを表現できる、独自の能力を持っています。ピアノとパイプオルガンとリードオルガンと電子オルガンを同じ土俵の上で比較する事などは、いささかナンセンスな事だと言えます。
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