オルガンはバルコニーの上に置かれていますが、建物との固定などの地震対策は施されていませんでした。また、オルガンケース自体も強度が不足しており、補強を必要としました。
各部材の接合が不充分なので、補強金物によって接合を確実なものにしました。まず、この作業を行っておかなければ、建物との固定をしても充分な耐震効果は期待できません。
重い風箱やパイプ群を載せているやぐらは線構造であるため、横方向の力が加わった場合は容易に変形します。これに対抗するため、建築用の火打ちを入れて補強しました。
オルガンケースの補強が終了したら、アンカーを打ち込みL型金具でコンクリートの床に固定します。
  
足元を固めた後はオルガンの上部を建物と固定します。オルガンの後ろにある隔壁は強度がないため、その隔壁を貫いて建物の本柱とトラ張りをすることにしました。これからの作業はオルガンビルダーが行う仕事の範疇を超えているかも知れません。防塵マスクにヘルメット、ヘッドライトを点けて壁の内部に進入します。
まずは、建築図面から貫通位置を割り出します。やり直しが利かない作業なので、レーザーを使って正確な位置を決定します。
床下を通って隔壁の後方に進入します。 床下はこのような状態です。
本柱に傷を付けないためにステンレスバンドで養生をした上にワイヤーを巻き付けます。 隔壁を貫いたロッドはオルガンの天井と繋がれ、ターンバックルで適度なテンションを掛けられています。
オルガンの天井は左右で建物本柱と繋がれ、オルガンが前に倒れるのを防ぎます。貫通孔には飾り枠を取り付け、視覚的にも違和感のないような配慮がなされています。
オルガン正面の大型パイプは固定方法が脆弱なため、いったん取り外して固定方法を改善します。
当初は直径3mm程度のピンに引っ掛けてありました。 直径6mmのボルトに換えて、ナットで再固定しました。
再固定作業の様子です。 高所作業なので命綱は不可欠です。
ピンやフックが破壊された時のために、パイプは落下防止のワイヤーでオルガンケースと結ばれています。
製作された後で耐震補強を施す場合は、限られた条件の下で行わなければなりません。必ずしも100%の改善ができるとは言えませんが、大きな問題が解消されることは安心につながると思います。設計段階から耐震という意識があれば、無粋な補強金物も最小限に抑えることができます。ただし、オルガン内部に入らない限り見ることはできず、外観には何の違和感もありません。
国内に設置されている多くのオルガンも今後耐震調査を行い、事前に取り得る地震対策を施すことが大切だと考えます。
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ドイツから輸入された美しいオルガンがバルコニーに設置されていましたが、調査した結果、耐震強度に関する問題がいくつも判明しました。海外のオルガンビルダーによって製作されたオルガンには耐震というコンセプトがない場合が多く、地震国の日本においてはオルガン自体の被害や人的被害が心配されます。

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